古屋のもり
昔、昔。ある所に爺様と婆様どあったどな。
大きな百姓家であったども、家族みんな死んでしまって、爺様と婆様ばり残さえたど。
そごの家にまだ大きな馬一頭いだじおな。
ある雨の降る晩げ、囲炉裏まわりさ あだって爺様と婆様ど話コしてらど。
そごさ、前々から馬欲しくて、欲しくて、盗む気してら馬喰、雨も降ってらし、
良えおりだ、盗んでけらど思って、馬小屋さ忍び込んで、屋根さ登ってたじぉな。
一方、山奥の狼も馬食ってゃぐで、どんもなんねゃたいに、馬小屋さ忍び込んでらじぉな。
その時、婆様、「爺様、爺様、世の中に何おっかなゃて古屋のもりほど、おっかゃものねゃなんし。」て、言ったどな。
それ狼聞いで、「おれよりおっかねゃもの、居るもんたべか。」ど、思て、どでんしてら所さ、屋根の上で待ぢくたぶれでら馬喰、ねぶかげして、狼の背中さドッカリどおりたど。
狼どてんしたもした、背中のもの人間だども思わねゃで、馬喰どこ乗ひだまま、一目散に逃げだどな。
良えくりゃ行ったきゃ、山奥の木さ登ってら猿、それ見で、「あえ、おがしでゃ。おがしでゃ。人間背中さ のへでらでゃ。」て、笑ってはやしたばって、猿気付がねゃで、どこまでも走たど。
したっきゃ、けもののおどし穴さよぐ又、首もはさまねゃで、スッポリど、はまってしまったどな。
馬喰、そのまんま静かにして、夜明げまで待ぢでらきゃ、猿そごさ来て、尻尾で穴のまわり探して、「人間いたが、人間いたが。」って云ったどな。
馬喰、「よし、あえさ つかまって上ってけら。」ど、思って、うかがってらば、又、猿 尻尾で探したけど。
馬喰 その尻尾さ跳びづで、うみゃぐ助かったど。んだども、猿の尻尾抜げで、無ゃぐなってしまったど。
それがら、猿の尻尾 無ゃぐなったど。どっとはらい。
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